ベリー ベスト オブ 死ぬかと思った

40年ちょい生きていると、何度か命の危険に出くわすことがある。
たとえば、

  • 台風の日に出歩いていたら、アーケードの屋根が数m先に落ちた。
    (数秒早く歩いていたら直撃)
  • 居眠り運転をして、雪上で急ハンドルを切ってしまい、1回転してトラックとすれ違った。
    (スリップしなければトラックと正面衝突)
  • 友人宅の帰り道、運転していたら対向車線を走っていたミニバンがカーブでスピードを出し過ぎで曲がりきれず横転して目の前をすり抜けていった。
    (タイミングが悪ければ激突)
  • 早朝から遠地出張があったため、徹夜で仕事してたら4時頃隣人宅でストーブに洗濯物が落ちたらしく小火になった。
    (出張かつ徹夜してなかったら煙に気づかなくて小火じゃ済まなかった)
  • すき焼き屋の女将が、コンロと鍋の間に予備のガスコンロを挟んだまま部屋に持ってきて、そのまま火をつけたが、おれが気づいてすぐに止めた。
    (そのままにしてたら爆発)

運がいいのか悪いのか、下手したら死んでた、みたいなことが何度かあって、しかしそれでも死の匂いまでは嗅ぐことはなかった。

だけど、死神は突然目の前に現れた。

ちょっと前に長女の塾のお迎えの帰りに、娘がハンバーグを食べたいということだったので、あまり行かないハンバーグ屋さんに入った。
昼を抜いたこともあって腹が減っていたので、サーロインステーキ500gを注文した。塾の様子など雑談をしながら幸せな時間を過ごしていたら、ほどなくして料理が運ばれてきた。
「こんな大きなお肉食べれるの〜」
「ははっ、パパを舐めるなよ」
というやり取りがあって、割りと大きめに切った肉をほおばり、どんなもんだと肉を噛み締めていた。
最初は赤身肉の部分だったのでそこそこ噛めば飲み込めた。
次に脂身部分を含む辺りを切って口に運んだ、その数秒後に違和感が走った。

スジだ。スジが入っている。

いつもと違う店に入ったことも災いした。いつもの店ならスジきりがされていてこんなに噛めないことはない。一度口から出して再度切るか。いや、それは汚らしい。かと言ってこれは噛み続けたら切れる、というものでもなさそうだ。そうするうち、少しだけ飲み込めそうな気配がしてきた。行くか。とりあえず軽く飲み込んでみた。お、入っていった。と、その時。明らかに喉の途中で止まった感じがした。やっぱりか。慌てない慌てない。落ち着いて吐き出すんだ。カッと、喉を鳴らして追い出そうとしてみる。ビクともしない。これは、マズイやつだ。心臓がバクンバクン鳴り出した。飲み込むか、出すか。でも出ない。飲み込もうとしてみる。全く動く気配がない。ヤバイ!これは詰まってる!間違いなく詰まってる!おいおいおいおい!これ死ぬやつじゃないか!あれ!呼吸ができない!いかん!水だ!水を流し込むんだ!ゴクゴクゴクゴ、あ、やっば入っていかない!これは!ヤバイ!死ぬ!誰かに背中を叩いてもらうしか!厨房だ!走れ!いた!ちょ、叩いて!そんな顔してる場合じゃないって!声が出ない!声にならない!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!うおおおおおおがはあッッッッ!

で、出た、、、

ということで、水を流しこんだ時の残りが体を動かしたことでおそらく気道に入ったために反射が起こり、詰まっていた肉を吐き出せた、ということみたいだった。

今思い返してもゾッとする。もし水を口に入れなかったら。もしその水が口内に残ってなかったら。もし気道に入らなかったら。もし反射が起こらなかったら。

僕はここにいなかったかもしれない。

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